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中小同族企業が100年超継続企業を目指す

第12回京都100年企業研究会企業訪問セミナー 株式会社ちきりや様 訪問レポート

時代の荒波を受けながら、また業界的にはますます厳しくなっている茶業界において、静岡の製造部門、京都の卸売部門、そして今回新たに新規事業として飲食部門を立ち上げられた京都の老舗お茶屋、株式会社ちきりや

様に訪問させていただきました。現社長米内政明様から従業員に訴えていること、お客様への信義、自らの決意を表した座右の銘など大変有意義な内容をお話しいただきました。その模様をレポートいたしました。

是非お読みください。

京都100年企業研究会 企業訪問レポート
ちきりや様 企業訪問セミナーレポート報告 修正版20120613.pdf
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京都100年企業研究会 第12回 株式会社ちきりや様      企業訪問セミナーレポート報告 

 

平成24611日作成 

                           株式会社 ひろせ総研

                          中小企業診断士 林 勇作

 

訪問日 平成24518日金曜日 1500分から2030

訪問先 株式会社 ちきりや 

参加者 11名(内当研究会会員・準会員3名、新規5名、総研スタッフ3名)

 

訪問して知り得た情報、なるほどと感心したこと

今回訪問させていただいたのは株式会社ちきりや様の新規事業である飲食部門のちきりや茶寮です。元々老舗の喫茶店が入居していたテナントに昨年末にオープンされた和風喫茶並びに和のテイストを加味した洋食の店でとてもおしゃれな空間でした。実は昭和15年(1940年)に本格的和風喫茶「ちきりや茶寮」が、京都市中京区河原町三条下るにオープンし、当時開発された「抹茶アイスクリーム」が日本で商品化第一号といわれておりました。70年の年月を経て、四条烏丸を上がったところに復活オープンしたとのことでした。

 

初めに米内政明社長からご自身の遍歴と会社の歴史を重ねてお話しいただきました。

社長は歴代の当主高橋家とは遠縁にあたり、たまたまのご縁で従業員として勤務していたところ、3年前に先代の高橋社長から京都を見てもらうと会社を託されました。

元々入社した経緯も大変ユニークで一度の面接で次の4月から来てくれという感じで決まったとのこと。家族はもっとしっかり就職を考えないと、と言われたのですが、その面接時に昼食をごちそうになり、更にお土産にいただいた運動靴が気に入ってしまい、そのまま入社したとのこと。

 

最初は朝早くから夜遅くまでお客様回りに明け暮れて、思った以上にきつく、何度もやめようかと思われましたが、何の縁かここまで来てしまったと苦笑いされていました。しかし営業として様々な経験をしているうちに、素晴らしい出会いがありました。そのひとつがイトーヨーカ堂の現相談役塙昭彦氏でした。この方から教わった言葉が今も心の中に深く残っています。否定論理からは何も生まれない。前を向いて「やってみなはれ」とばかりに、「人生すべて当たりくじ」という塙氏の著書からどんなつらいことも自分にとってプラスになることだと思い込むことが重要なのだ。そこから社長の座右の銘の「莫盲想」(上に立つものは人一倍苦労する。こうと決めたらやり通す)につながっているのでしょう。

 

社長として何をすべきか、その役割は何か、判断基準をどこに置くか、これらについて社長は自らの経験と経営を学ぶことで会得されました。その一例をあげます。

 

・企業は「ロマン・我慢・そろばん」が必要。

 最後はやっぱり資金が重要。借金はしないのが先代からの教訓。 

 

・社長の役割とは「観察力or洞察力をもって気付かせ役になること」

 昨年震災時、当社のミスで納品が遅れていた。その対応策のため取引様への訪問を今週中にと部下は考えていた。しかし社長として一喝したことは「自分のミスでお客様にご迷惑をかけているのだから、何よりも早くお伺いして謝り、対応すべきじゃないのか」。そして当日中に行動を起こしたことが、後になってお客様から「こんな大変な時に御社が一番早く動いてくれた。」と逆に感謝され、その後も信頼関係をもって取引が続いた。

会社にとっての判断「今何をすべきか?」、これを気付かせるのは社長なのだとお話になりました。

 

・「あ・い・う・え・お」

あ:アイデアを出せ、 い:インタレスト(興味をもて)、 う:ウォーク(顧客・市場を見てこい)、え;エキサイティング(情熱を持って一生懸命に)、 お:オーナーズシップ(各営業所のトップは経営者の目線で動け) 

 

・業務と仕事 

会社に利益を導く行動が仕事、いつも通りに変わらず流れに任せてやっていることは業務。会社の都合で約束事を変えてしまうのはよくない。決めたことは徹夜してもやり遂げる心意気でやりぬくことが仕事をするということ。

 

・「社長なんて偉くもなんともない。課長・部長・包丁・盲腸と同じ。要するに命令系統をハッキリさせる記号」でしかないと言い切る。

役職者は普段の動きより、非常事態の時に頑張りを見せることが大事。例えば交通事情で納品遅れが生じそうな時に年末商戦の大事な商品をお待ちになっているお客様のために唯一の交通手段の新幹線を使ってまでも間に合わせた。と同時に交通事情をリアルタイムにお伝えし、お客様に大変感謝されたことがあった。

納品にこだわる社長の信念が見えた瞬間であった。

・「水は溜まると濁る、摩擦があるからエネルギーが生まれ組織が進化する」

だから会議中は思ったことをすべて言って欲しいと従業員に常に言っている。

 

最後に人は身なりで判断しない。

ごみを拾っている人は従業員で、奥に座って偉そうにしている人が社長という偏見は持ってはならないという。先の塙氏はイトーヨーカ堂の中国進出で1000億の企業に育て上げた方である。その方の中国での呼称は「ゴミ拾いおじさん」だそうである。米内社長自身も掃除中に金融系営業マンに「社長はいらっしゃいますか」と声をかけられた。少々お待ち下さいと名刺を取りに行き、戻って来て、社長の米内ですと挨拶をすると、相手は態度を急変されるというような扱いを何度か受けたことがあった。やはりその営業マンにいい印象は持たれなかったそうである。

 

ティータイムでは美味しいお茶の煎れ方、飲み方を実践の中で教えていただきました。いつもお茶の飲み方で講義されている社長は、大変慣れた口調で分かりやすくご説明いただきました。笑いの絶えないティータイムでした。

 

その後新規事業を立ち上げる経緯についてお話いただきました。

お茶の持つ文化と空間をもう一度見直していきたいとの思いは社長になる前から思っていました。

法人として日本のほとんどを占める中小企業の70%が赤字であるが、なんとか残りの30%に当社はなりたい。

そのような思いから、老舗のお茶屋が飲食店(甘味処)で成功しているのを見ていて、いつかはやってみたいと思っていました。立上げには様々な障害がありましたが、縁あって素晴らしいスタッフに恵まれ、思った以上に充実した和風喫茶並びに和のテイストを加味した洋食の店がオープンできました。

その経営方針は「仕事は楽しく、職場は明るくお客様には最大の満足を」、現場の意見を吸い上げて、意見をどんどんぶつけあってよいものにしよう。2年間で黒字にし、利益が出たら皆で分かち合おうと言っています。

本社は店の為、店はお客様の為にと全社一丸となって、逆に黒字にすることがお客様の為、皆の為、会社の為とおっしゃっておられたように思え、印象的でした。

 

蛇が脱皮する時に涙するように、産みの苦しみはつらいことが多いが、皆の力で乗り切っていきたいと否定論理ではなく「やってみなはれ」的な気持ちで臨まれている社長に強い想いを感じたのは参加会員のみならず、店内スタッフの方々も同じだったはずです。

この後参加いただきました会員様からそれぞれの自社の課題をお話いただき、その課題解決の処方箋を米内社長や参加会員の方からお話しいただきました。

 

特に社長からお話しいただいたお答えの中から100年企業になるための3つの仮説

の実証検証に当たるものをピックアップさせていただきました。

 

Ⅰ.残すべきものと変えるべきものを明確に区分する 

 

 

 1.残すべきもの:お茶の持つ文化と空間を大事にしたい。

 

日本のDNAが残っている間に、お茶に触れ合う時間を持っていただき、お茶の文化、ふれあう空間を日常の中に増やしていきたい。そんな思いから和風喫茶を始めた。

 

 

2. 変えるべきもの:直接消費者との接点を持つ、お茶の世界からそれほど離れず背伸びせずに出来るところから変えていく。

 

家庭から急須がなくなるような今日が、当社にとって逆風の時代であり、経営環境は厳しくなっている。だから今本業が成り立っているうちに、時代の求めを探り、提案していくことが求められている。そのためには世相を作っている消費者の声をもっと聴かなければならない。小売業への進出の理由である。

 

 

3.変えるべきもの:同業者がしていないところを目指す。食文化を発信、器やランチョンマットのデザイナー、そして家庭での料理教室家 若林三弥子氏 (お茶を使ったレシピ) など異業種とのコラボに取り組む。

 

茶業界はどうもなじまないところが多い。しかし若手経営者の中にはお互い協力し合い業界を盛り上げようという動きがあるのが嬉しいと社長は言う。

そんな中、他のお茶屋がやっているスィーツの喫茶も魅力的であった。更に社長は他店とは少し違った取り組みもしていきたいという。それが異業種交流である。

 

 

Ⅱ.将来のビジョンを示し、その達成のために必要な人財をトップ自ら育てる 

 

 

  1. 後継者伝えていきたいことは:職場は家庭の延長と心得よ。

 

社長のポリシーは、『職場は家庭の延長』ということ。この言葉の意味するところは自分の家ならいらない電気は消すし、ごみが落ちていれば拾う。それが当たり前なのに、会社に来るとその意識が薄れ、物も大事にしなくなる。だから職場は家庭と一緒と考えて行動してほしいと従業員にも徹底している。しかしそう簡単には浸透しない。そう感じた社長は自らごみを拾う、電気を消す、もったいないを実践され、手本となる行動を続けておられる。

実はこのことは私が老舗での教育方法で最もポピュラーなものだと思っています。何百年も続く老舗では後継者である子息は、小さな頃から職場を遊び場とし、職場が日常でありました。それが故に両親の行動を常に見ており、親の背中を見て育つがまさに的確な表現でした。米内社長はそれを第三者である従業員に徹底したかったのではないでしょうか。

 

 

3.従業員の教育方針は: それぞれの部門でメンバーの一人が1カ月長期休暇がとれるくらいのチ―ムワーキングに努めてほしい。

 

一人が一週間休んでも困らないよう横の連携を取ること。ベテランほど仕事に聖域を作りたがる。誰もが対応できるような組織づくりを目指してほしい。その上で各人は責任と自覚を持つようにしてほしい。言っても分かりにくいので具体的に1カ月休めといっている。

 

その推進策の一環として有給取得一覧を公開している。

しかし取れる人取れない人がいる。それはおかしいのではないか。バランス良くとってほしい。それが社長の言うチームワーキングであろう。

 

業務の避難訓練はしてはどうか。突然上司が来れなくなった。さて部下はその一日をどうやって乗り切るか。をドッキリ的にやってみることで部下の普段からの意識付けを高める (参加者からのご意見)

  

Ⅲ.売り手よし、買い手よし、世間もっとよし 

 

 

  1. 内なる社会貢献として従業員に対し:雇用の創出、生活水準の向上と意識改革

 

福利厚生として毎年慰安旅行に連れていく。その目的は従業員の考え方を変える、世界観を変えること。昨年は中国へ行って、最先端の場所と最も生活感のあるところを見てもらいギャップを感じさせている。あるテーマで目標を達成したら海外旅行を実行するというモチベーションアップ策にもつなげている。

 

  1. 外への社会への貢献として:しっかり儲けて適度に節税をして、税金はしっかり納めることが社会への恩返しと思っている。

 

最後に社長のお人柄を表すのに的確な言葉を紹介します。

社長から会のはじめにお聞きした言葉です。

「実るほど首を垂れる稲穂かな」 謙虚さと感謝 私が最も強く感じた社長のイメージでした。

以 上

 

 

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企業継続のための3つの仮説

このテーマはこれまでの私の老舗研究の

中から生まれてきたものです。

 

一見当たり前のことのように見えますが、

それを当たりえのように実践することが

難しいのです。

 

京都の老舗が、どのように実践されて

いるか具体的事例でご説明します。

 

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